会計の概念フレームワークを英語で学ぼう!米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第32回〜

2021年5月17日

 

こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。

「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています

この記事では「英文会計入門」第32回として「会計の概念フレームワークを英語で学びたい」という方に、その基礎的な内容をやさしく解説しています。

◆前回の記事◆【会計上の変更・遡及適用】は英語でなんて言う?米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第31回〜

【会計上の変更・遡及適用】は英語でなんて言う?米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第31回〜

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概念フレームワークって何?

「概念フレームワーク」とは、財務報告の基礎(原理)となる諸概念のことです。

概念フレームワークは、基本的な指針を示すものであり、IFRS(国際会計基準)やGAAP(一般会計原則)の一部というわけではありません。

したがって、概念フレームワークの内容が個別のIFRSやGAAPに優先するものではありません。

そのため、例えば、概念フレームワークとIFRSやGAAPが矛盾する場合は、個別のIFRSやGAAPが優先されます。

では、概念フレームワークを学ぶ意義とは何でしょうか?

一般的には、次のような意義があるといわれています。

IFRSやGAAPの理解や解釈に役立つ

首尾一貫した会計基準の指針となるため、将来の会計基準の開発や既存の会計基準の修正の予見に役立つ

専門性を会計としていきたい方は、学んでおいて損はないと思います。

しかしながら、IFRSやUSGAAPなど海外の概念フレームワークは、原文は英語で書かれています。

英語力に余程自信がない限り、いきなり原文を見て内容を理解するのは難しいと思います。

そのため、本日の記事では、英語で書かれているIFRSの概念フレームワークを簡単に解説していきます。

各自興味があれば、そこから先の深い学習に進んでいただけたらと思います。

IFRSの概念フレームワーク

財務報告の目的

<原文の紹介>
The objective of general purpose financial reporting is to provide financial information about the reporting entity that is useful to existing and potential investors, lenders and other creditors in making decisions relating to providing resources to the entity.

<日本語訳>
一般目的財務報告の目的は、既存および潜在的な投資家、貸付人、その他の債権者が、企業への資源提供に関する意思決定を行う際に、報告企業に関する有用な財務情報を提供することです。

<ポイント>
概念フレームワークの最初に「財務報告の目的」を定義しています。

ある企業の資金提供者たちが「この会社に資金提供すべきか?」という意思決定を行う際に、役に立つような財務情報を示すことが財務報告の目的と言っています。

<重要な英単語>
reporting entity 報告企業
existing and potential investors 既存および潜在的な投資家
renders 貸付人
creditors 債権者
making decisions 意思決定すること

有用な財務情報の質的特性

<原文の紹介>
The fundamental qualitative characteristics are relevance and faithful representation.

Relevant financial information is capable of making a difference in the decisions made by users. Information may be capable of making a difference in a decision even if some users choose not to take advantage of it or are already aware of it from other sources.

Financial information is capable of making a difference in decisions if it has predictive value, confirmatory value or both.

To be useful, financial information must not only represent relevant phenomena, but it must also faithfully represent the substance of the phenomena that it purports to represent.

To be a perfectly faithful representation, a depiction would have three characteristics. It would be complete, neutral and free from error.

<日本語訳>
基本的な質的特性は、「関連性(=目的適合性)」と「忠実な表現(=表現の忠実性)」です。

「関連性」のある財務情報とは、財務諸表利用者の意思決定に違いをもたらすことができる情報です。一部の財務諸表利用者がその情報を利用しないことを選択したり、既に他の情報源からその情報を知っていたとしても、その情報は意思決定に違いをもたらす可能性があります。

「予測価値」「確認価値」またはその両方を備えていれば、その財務情報は意思決定に違いをもたらすことができます。

財務情報が有用であるためには、関連する事象を表現するだけでなく、表現しようとしている事象の「実体、実質」を忠実に表していなければなりません。

完全に忠実な表現には、その描写に3つの特徴があります。「完全性」「中立性」「誤謬が存在しないこと」です。

<ポイント>
ここでは、有用な財務情報の質的特性を、「財務諸表利用者の意思決定に影響があること(=目的適合性)」「事象の実体、実質をすべて描写すること(=表現の忠実性)」であると説明しています。

<重要な英単語>
relevance 目的適合性
faithful representation 表現の忠実性
predictive value 予測価値
confirmatory value 確認価値
phenomena 現象、事象
substance 実体、実質
depiction 描写
characteristics 特徴

財務諸表と報告企業

<原文の紹介>
The objective of financial statements is to provide financial information about the reporting entity’s assets, liabilities, equity, income and expenses that is useful to users of financial statements in assessing the prospects for future net cash inflows to the reporting entity and in assessing management’s stewardship of the entity’s economic resources.

A reporting entity is an entity that is required, or chooses, to prepare financial statements. A reporting entity can be a single entity or a portion of an entity or can comprise more than one entity. A reporting entity is not necessarily a legal entity.

<日本語訳>
財務諸表の目的は、報告企業の資産、負債、資本、収益および費用に関する財務情報を提供することです。これは財務諸表の利用者にとって、報告企業への将来の正味の現金流入(ネット・キャッシュ・インフロー)の見通しを評価し、企業の経済的資源に対する経営陣の管理運用(スチュワードシップ)を評価する上で有用なものです。

報告企業とは、財務諸表を作成することが要求されているか、またはそれを選択した企業のことです。報告企業は、単一の企業、企業の一部、または複数の企業で構成されることがあります。また、報告企業は必ずしも法人である必要はありません。

ポイント
ここでは財務諸表の目的と報告企業の定義を示しています。

財務諸表の目的は、「ネット・キャッシュ・インフローの予測や経営者のスチュワードシップの評価に有用な財務情報の提供」であり、報告企業とは、必ずしも法人ではないということを説明しています。

<重要な英単語>
assets 資産
liabilities 負債
equity 資本
income 収益
expenses 費用
management’s stewardship 経営層のスチュワードシップ
economic resources 経済的資源

資産、負債、資本の定義(財務諸表の構成要素)

<原文の紹介>
An asset is a present economic resource controlled by the entity as a result of past events.

A liability is a present obligation of the entity to transfer an economic resource as a result of past events.

Equity is the residual interest in the assets of the entity after deducting all its liabilities.

<日本語訳>
資産とは、過去の事象の結果として、企業が支配する現在の経済的資源のことです。

負債とは、過去の事象の結果として、企業が経済的資源を移転するという現在の義務です。

資本とは、企業の資産からすべての負債を差し引いた後の残余の持分のことです。

ポイント
資産は「企業が支配する現在の経済的資源」、負債は「企業が経済的資源を移転するという現在の義務」、資本は「資産から負債を引いた残りの部分」と定義されています。

<重要な英単語>
control 支配する
obligation 義務
transfer 移転する
residual interest 残存持分
deduct 控除する、差し引く

収益、費用の定義(財務諸表の構成要素)

<原文の紹介>
Income is increases in assets, or decreases in liabilities, that result in increases in equity, other than those relating to contributions from holders of equity claims.

Expenses are decreases in assets, or increases in liabilities, that result in decreases in equity, other than those relating to distributions to holders of equity claims.

<日本語訳>
収益とは、資本の増加をもたらす資産の増加または負債の減少のことで、株主からの出資に関連するものを除きます。

費用とは、資本の減少をもたらす資産の減少または負債の増加のことで、株主への分配に関連するものを除きます。

ポイント
収益や費用の定義は、資産や負債の増減によって表されています。

つまり、収益から費用を差し引いた利益も、資産や負債の増減によって決まります。

このような考え方は「資産負債アプローチ」と呼ばれます。

<重要な英単語>
contribution 出資、拠出
distribution 分配
holders of equity claims 資本請求権の持ち主=株主

 

認識および認識の中止

<原文の紹介>
Recognition is the process of capturing for inclusion in the statement of financial position or the statement(s) of financial performance an item that meets the definition of one of the elements of financial statements—an asset, a liability, equity, income or expenses.

Derecognition is the removal of all or part of a recognised asset or liability from an entity’s statement of financial position. Derecognition normally occurs when that item no longer meets the definition of an asset or of a liability.

<日本語訳>
認識とは、財務諸表の構成要素である資産、負債、資本、収益、費用のいずれかの定義を満たす項目を、貸借対照表または損益計算書などに組み入れるプロセスのことをいいます。

認識の中止とは、認識した資産または負債の全部または一部を企業の貸借対照表から削除することです。認識の中止は、通常、その項目が資産または負債の定義を満たさなくなったときに発生します。

ポイント
認識は、「財務諸表のある項目を財務諸表に組み入れること」、認識の中止は、「資産または負債を財務諸表から削除すること」です。

<重要な英単語>
recognition 認識
meet the definition 定義を満たす
the elements of financial statements 財務諸表の構成要素
derecognition 認識の中止
occur 発生する

測定

<原文の紹介>
Historical cost measures provide monetary information about assets, liabilities and related income and expenses, using information derived, at least in part, from the price of the transaction or other event that gave rise to them.

Current value measures provide monetary information about assets, liabilities and related income and expenses, using information updated to reflect conditions at the measurement date.

<日本語訳>
取得原価測定は、資産、負債および関連する収益、費用の貨幣情報を提供するものです。その貨幣情報は、(資産などを生じさせた)取引価格またはその他の事象の価格に少なくとも部分的に由来する情報が用いられます。

時価測定は、測定日の状況を反映して更新された情報を用いて、資産、負債および関連する収益、費用に関する貨幣情報を提供します。

ポイント
取得原価測定は、過去の取引価格などを用いて資産などを測定します。

時価測定では、測定日の最新情報を用いて資産などを測定します。

<重要な英単語>
monetary information 貨幣情報
derive 導き出す
transaction 取引
give rise to 生み出す、生じる
reflect conditions 状況を反映する
measurement date 測定日

表示および開示

<原文の紹介>
Effective communication of information in financial statements makes that information more relevant and contributes to a faithful representation of an entity’s assets, liabilities, equity, income and expenses. It also enhances the understandability and comparability of information in financial statements. Effective communication of information in financial statements requires:

(a) focusing on presentation and disclosure objectives and principles rather than focusing on rules;

(b) classifying information in a manner that groups similar items and separates dissimilar items; and

(c) aggregating information in such a way that it is not obscured either by unnecessary detail or by excessive aggregation.

<日本語訳>
財務諸表における情報の効果的な伝達は、その情報をより「目的適合性」の高いものとし、企業の資産、負債、資本、収益、費用の「表現の忠実性」に貢献します。また、財務諸表の情報の理解可能性と比較可能性を高めます。財務諸表における情報の効果的な伝達には、以下が求められます。

(a) 規則を重視するのではなく、表示および開示の目的と原則を重視すること。

(b) 類似する項目と類似しない項目をグループ化することで、情報を分類すること。

(c) 不必要な詳細や過剰な集約によって、情報があいまいにならないように情報を集約すること。

ポイント
ディスクロージャーにおいては、「目的と原則の重視」「適切なグループ化」「適切な集約化」が、「目的適合性」と「表現の忠実性」に貢献すると説明しています。

<重要な英単語>
effective communication of information 情報の効率的な伝達
enhance 高める
understandability and comparability 理解可能性と比較可能性
principles 原理、原則
classify 分類する
group グループ化する
similar items 類似する項目
dissimilar items 類似しない項目
aggregate 集約する
obscure 不明瞭な、あいまいな
excessive 過剰な

最後に

いかがでしたか?会計の専門用語がたくさん出てきましたね。

IFRSの概念フレームワークは、会計の基礎を英語で学習するのにピッタリの教材です。

「もっと深く概念フレームワークを学習したい!」という方は、IFRSの公式ページから無料の会員登録をすることで、原文を読むことができます。

 

 

 
 

 

 

◆次回の記事◆【収益認識】は英語でなんて言う?米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第33回〜

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