こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。
「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています。
この記事では「英文会計入門」第31回として「会計上の変更・遡及適用は英語でなんて言うの?」という疑問にやさしくお答えします。
◆前回の記事◆【人件費・法定福利費・福利厚生費】は英語でなんて言う?米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第30回〜
なお、本記事は企業会計基準委員会が公表する基準を参考にしています。
目次
会計上の変更は英語でなんて言うの?
会計上の変更はAccounting changesと英語で表現し、①会計方針の変更、②表示方法の変更、③会計上の見積りの変更、これら3つの総称です。
①②③のいずれにも該当しない場合は、会計上の変更ではありません。
過去の誤謬(ミス・間違い)を修正することは、会計上の変更ではない点に注意が必要です。
会計方針の変更
会計方針の変更とは「従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更する」ことをいいます。
例えば、減価償却方法を定率法から定額法に変更したり、棚卸資産の評価を先入先出法から移動平均法に変更したりすることなどです。
では、会計方針の変更は英語で何と言うのでしょうか?
「Changes in accounting policies」です。
例文紹介
- 会計方針の変更には、過去に発生しなかった、あるいは重要性のなかった取引や事象に対する会計方針は含まれない。
Changes in accounting policies do not include applying an accounting policy to a kind of transaction or event that did not occur previously or were immaterial.
表示方法の変更
表示方法の変更とは「従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更すること」をいいます。
例えば、ある勘定科目の金額の重要性が乏しくなったため、「その他」に含めて表示するよう変更することなどが該当します。
では、表示方法の変更は英語で何と言うのでしょうか?
「Changes in presentation」です。
なお、「誤謬の訂正」は会計英語で"Correction of errors"といいます。
また、過去の誤謬が発見されたら、原則として財務諸表の「修正再表示」が必要となりますが、英語では"Restatement"と表現します。
余裕があればこちらも覚えておきましょう。
会計上の見積もりの変更
会計上の見積りの変更とは「新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更すること」です。
例えば、取引先の経営状況のアップデートにより、見積もるべき貸倒引当金の金額が変更になったことなどが該当します。
では、会計上の見積もりの変更は英語で何と言うのでしょうか?
「Changes in accounting estimates」です。
例文紹介
- 減価償却資産の耐用年数の変更は、会計上の見積りの変更とみなされます。
Changes in the useful life of depreciable assets are regarded as changes in accounting estimates.
会計上の変更の関連用語を覚えよう
正当な理由
会計方針は、原則的に継続して適用しなければなりませんが、会計基準の改正や「正当な理由」がある場合に限り、これを変更することが認められています。
では「正当な理由」は英語で何と言うのでしょうか?
「Justifiable reasons/grounds」です。
「正当な」はJustifiable、「理由」はreasonsやgrounds(根拠)を使います。
Justifiableは、Justify(正当化する)に-ableを加えて「正当化が可能な」という意味の形容詞です。
「正当な理由」は日本基準上の概念なので、海外拠点の現地スタッフにいきなりJustifiable reasons/groundsと言っても伝わらない可能性が高いです。
したがって、この会計用語を英語で言うときは「日本基準では(under Japanese GAAP)」という紹介をしたうえで使う必要があります。
例文紹介
- 日本の会計基準では、会計基準の改正や「正当な理由」に基づいて変更する場合を除き、会計原則と手続きを継続して適用しなければなりません。
Under Japanese GAAP, the accounting principles and procedures must be applied continuously, except in cases of revising accounting standards or making a change based on ‘justifiable reasons/grounds’.
遡及適用する
会計方針の変更は、新たな会計方針を過去に遡って適用していたかのように会計処理します。
これを「遡及(そきゅう)適用する」と表現します。では「遡及適用」は英語で何と言うのでしょうか?
「Retrospective application」です。
Retrospectiveとは「過去に遡(さかのぼ)っての、過去の振り返るような」という意味の形容詞です。
レトロスペクティブと発音し、接頭辞retro-は「後方へ、逆の」という意味を持ちます。
また「古くて趣のある、懐古的な、ビンテージの」という意味で「レトロな(retro)」という言葉がありますね。
日本語の「レトロな」とretrospectiveを頭の中で関連させて覚えると、記憶に残りやすくなるのでオススメです。
「遡及適用する」と動詞として使いたい場合は、次のように表現します。
例文紹介
- 会計方針の変更は、遡及適用されなければなりません。
Changes in accounting policies shall be accounted for retrospectively.
遡及適用するは、言い換えると「過去に遡って会計処理する」ということです。
英語に翻訳する前に、このようなシンプルな日本語でいったん言い換えることが重要です。
「過去に遡って」は副詞なので、retrospectivelyと表現します。
「会計処理する」は、第2回の英文会計記事「会計処理は英語でなんていうの?」で紹介したように、account forを使います。
2つの英語を合体させて、「遡及適用する」はaccount for retrospectivelyと表します。
会計上の変更を語るうえで重要な会計英語なので、これを機に覚えておきましょう。
将来にわたり会計処理する
会計上の見積りの変更は、「当該変更が変更期間のみに影響する場合には、当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行う」と定められています。
会計方針の変更とは違い、過去に遡って修正することは認められていないということですね。
では、過去ではなく「将来にわたり会計処理すること」は英語で何と言うのでしょうか。
「Prospective application」です。
Prospectiveとは、「将来の、予測される、見込まれる」という意味の形容詞で、プロスペクティブと発音します。
Prospective applicationで、未来に向かって適用することを表しています。
「将来にわたり会計処理する」と動詞で使う場合は、次のように表現します。
例文紹介
- 会計上の見積りの変更は、将来にわたって会計処理されなければなりません。
Changes in accounting estimates shall be accounted for prospectively.
account for retrospectively(遡及適用する)の副詞retrospectivelyをprospectivelyに変更するだけなので、わかりやすいですね。
retrospectiveとprospectiveは対立する概念なので、セットで覚えましょう。
参考動画
IFRSの会計上の変更に関する取扱いを学習してみたいという方は、Silvia of CPDboxの動画(IAS 8 Accounting Policies, Changes in Accounting Estimates, Errors)をご覧になることをおすすめします。
まとめ:本日の復習
- 会計上の変更:Accounting changes
- 会計方針の変更:Changes in accounting policies
- 表示方法の変更:Changes in presentation
- 会計上の見積りの変更:Changes in accounting estimates
- 正当な理由:Justifiable reasons/grounds
- 遡及適用する:Account for retrospectively
- 将来にわたり会計処理する:Account for prospectively
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