こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。
「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています。
この記事では「英文会計入門」第4回として、「利益は英語でなんて言うの?」という疑問にやさしくお答えします。
◆前回の記事◆【決算作業・試算表・精算表】は英語でなんて言う?米国公認会計士がやさしく解説!〜英文会計入門シリーズ第3回〜
-
-
【決算作業・試算表・精算表】は英語でなんて言う?米国公認会計士がやさしく解説!〜英文会計入門シリーズ第3回〜
こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。 「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています。 この記事では ...
ビジネス英語で「利益」はなんて言うの?
収益"revenue"が費用"expense"を上回っている会社では、利益が出ていますね。
その「利益」はビジネス英語でなんと言うのでしょうか?
正解は「profit」です。
例
- 利益を生む
make a profit/turn a profit/earn a profit - 利益を最大化する
maximize profits
また、"profit"は名詞「利益」以外に、自動詞「利益を得る」という意味もあります。
例
- 我々の会社はまだ合併から利益を得られていない。
Our company has not profited from the merger. - 彼は他の投資家に株式を売ることで利益を得た。
He has profited by selling stocks to other investors.
会計で「利益」はなんて言うの?
会計上の利益にはいくつか種類があります。
損益計算書上のどの段階の利益を指すかによって表現が変わります。
また、IFRSとUS-GAAPで異なるので一緒に確認していきましょう。
「売上総利益」は英語でなんて言うの?
売上総利益は、「売上から売上原価を引いた利益」のことを指します。
粗利(あらり)や粗利益(あらりえき)とも呼ばれますね。
IFRS:Gross profit
"gross"とは「総計の、全体的な」という意味の形容詞です。
「グロス」は「総額」という意味でビジネス用語としてよく使われますね。
会計の世界では、「売上から(売上原価以外の)経費や税金を差し引く前の総収益」を意味します。
「売上総利益」の「総」の部分を"gross"に置き換えるだけなので、結構記憶しやすい会計英語だと思います。
イギリスの職場から
イギリスの職場では粗利のことを「GP(ジーピー)」と呼びます。文章では£GPと書きます。
US-GAAP:Gross margin on sales
"margin"は「余白」という意味のある英単語ですが、ビジネス用語の「マージン」にはいわゆる「粗利、粗利益」という意味があります。
"Gross margin on sales"は直訳で「売上に対する総額の粗利」です。つまり、「売上総利益」を表すわけですね。
on salesを省略することもあります。
「営業利益」は英語でなんて言うの?
営業利益とは、「売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた利益」のことをいいます。
一般的に、会社が本業で稼いだ利益を表すことで有名ですね。
IFRS:Operating profit
"operating"とは「経営上の、営業の」という意味の動名詞です。
「営業」と聞くと"sales"や"trade"などをイメージしがちですが、営業利益は「採用」「営業」「研究開発」「IR」「財務」「総務」などの本業を回すために必要な費用を引いた後の利益です。
「営業利益は、本業の収益からオペレーション全般に関わる費用を控除した後の利益だから"operating"という単語が使われるんだな」と理解すると覚えやすいでしょう。
豆知識
ちなみに「営業活動によるキャッシュフロー」は、「cash flows from operating activities」と訳します。余裕があれば、覚えておきましょう。
イギリスの職場から
イギリスの職場では営業利益をBusiness Profit(ビジネス・プロフィット)と呼びます。文章では「BP」と省略します。ご自身の職場に合わせた呼び方を使ってください。
US-GAAP:Operating income
US-GAAPは"profit"ではなく"income"という単語を使います。
"income statement(損益計算書)"の"income"ですね。
営業利益以外にも、「〇〇利益」を表す単語としてUS-GAAPで"income"はよく使われます。
「営業」を"operating"と英訳することは、IFRSと変わりません。
「経常利益」は英語でなんて言うの?
経常利益は、「営業利益から営業外収益を足して営業外費用を引いた利益」のことを指します。
「会社が経常的に得た利益」のことなので、本業および本業以外を含めた事業全体の損益が関係します。
本業以外の損益とは、例えばメーカーが貸付金によって得た「受取利息」などが該当しますね。
ただし、経常利益というのは日本基準の概念で、IFRSやUS-GAAPには経常利益という区分はありません。
豆知識
日本基準では、経常的に発生する「経常損益」と臨時的に発生する「特別損益」に分けて考えます。一方、IFRSやUS-GAAPは「事業に関係するか、事業に関係しないか」という基準で分類します。つまり営業損益か、それ以外か、というシンプルな区分です。
そのため、日本基準で例えば「特別損益」として扱われる項目も、IFRSやUS-GAAPでは事業に関わるものであれば全部「営業損益」に含まれてしまいます。
IFRSやUS-GAAPを採用している外国人に「経常利益」と言っても通じない点に留意が必要ですね。
以上がIFRSやUS-GAAPに経常利益がない理由ですが、日本基準の「経常利益」はどのように英語で表現するのでしょうか。
正解は「ordinary income/ordinary profit/recurring profit」です。
"ordinary"は、「普通の、通常の」という形容詞です。
ordinary person:普通の人、ordinary life:普通の人生
日本語の「経常的な」を「通常の」と頭の中で変換する必要があります。
もしくは、「繰り返し起きる」という意味の形容詞"recurring"を使います。
recurring dream:繰り返される夢、recurring problem:繰り返し起きる問題
余裕があれば、複数の表現を覚えておきましょう。
「特別利益」は英語でなんて言うの?
上記で述べたように、IFRSやUS-GAAPでは「営業損益」か「営業損益以外か」という区分を使うので、「特別利益」という概念も「経常利益」と同様に存在しません。
したがって、IFRSやUS-GAAPを採用している外国人に「特別利益」と言っても通じない点に留意が必要です。
それでは日本基準の「特別利益」は英語でなんと言うのでしょうか?
正解は「extraordinary income/extraordinary gain/extraordinary profit」です。
"extraordinary"は、"extra"と"ordinary"に分解して考えます。
"extra"は「~の範囲外」という意味の接頭辞です。
つまり「ordinary(普通の、通常の)範囲外」ということで「異常な」と訳されます。
特別利益は異常な利益だと言ってるんですね。
"gain"は名詞で「利得」という意味です。
会計の世界で、よく見る単語なので合わせて覚えておきましょう。
「当期純利益」は英語でなんて言うの?
当期純利益は、「すべての収益からすべての費用や税金を差し引いて最後に残った最終利益」のことです。
IFRS:profit
"profit"という1単語なので、シンプルで覚えやすいですね。
US-GAAP:net income
"net"とは、「正味の」という意味です。
上で解説した「gross(総計の)」の対義語として有名です。
「ネット」はビジネス用語にもなっていて、「ネット(正味)の金額」、「ネットする(差し引きする)」のような使い方をします。
最終利益は「正味の利益と言い換えられるから…と頭で変換すると記憶しやすい会計英語です。
豆知識
当期純利益は、損益計算書の「最後」に表示されることから、"bottom line"と表現されることもあります。
「包括利益」は英語でなんて言うの?
包括利益とは、かなりザックリ説明すると「会社の当期純利益±色々な含み損益」のことです。
詳しく知りたい方はグロービスの解説記事をご覧ください。
では、包括利益は英語でなんと言うのでしょうか?
正解は「comprehensive income」です。
"comprehensive"は「包括的な、大局的な、広範囲の」という意味の形容詞です。
少し難しい単語ですが、「コンプリヘンシヴ」と読みます。
例
- comprehensive view:大局的な見解
- comprehensive plan:総合計画
"comprehensive"はそこそこ難易度の高い英単語ですが、ビジネスで使われる可能性があるので覚えておいて損はないです。
IFRSとUS-GAAPどちらも同じ表現を使います。
comprehensive profitとは言わないので注意してください。
おまけ
利益剰余金は英語でなんて言うの?
貸借対照表の純資産の部に「利益剰余金」という「会社内部に蓄積された過去の利益を計上する勘定」があります。
「利益剰余金」は英語でなんて言うのでしょうか?
正解は「retained earnings」です。
"retained"は「保持する、維持する」という動詞"retain"の過去分詞形です。
「リテインド」と発音します。
earningsは会計英語で「利益」を意味しますが、利益剰余金以外ではあまり見かける単語ではありません。
earningsと常に複数形で使用する点に注意が必要です。
損失は英語でなんて言うの?
「損失」の英語は知っている人も多いと思うので、解説するほどでもないかもしれません。
正解は「loss」です。
例
- 売上総損失:gross loss
- 営業損失:operating loss
- 経常利益:ordinary loss
- 特別損失:extraordinary loss
注意点としては、包括利益がマイナスであっても「包括損失」という日本語表現がないように、英語においても"comprehensive loss"という表現は存在しないということです。
包括利益がマイナスの場合、勘定科目は"comprehensive income"を使い、マイナスの数値で表します。日本語の表示方法と同じですね。
まとめ:本日の復習
いかがでしたか?
一見難しそうな会計英語も覚え方自体を頭に入れておけば、いざという時に記憶から取り出しやすくなります。
今回は単語量が多めでしたが、少しでも皆さんのお役に立つことができたら幸いです。
- 『利益』はビジネス英語で『profit』
- 『売上総利益』は英語で
- IFRS『gross profit』
- US-GAAP『gross margin on sales』
- 『営業利益』は英語で
- IFRS『operating profit』
- US-GAAP『operating income』
- 『経常利益』は英語で『ordinary income/ordinary profit』など
- 『特別利益』は英語で『extraordinary income/extraordinary gain』など
- 『当期純利益』は英語で
- IFRS『profit』
- US-GAAP『net income』
- 『包括利益』は英語で『comprehensive income』
あわせて読みたい
◆次回の記事◆【借方・貸方】は英語でなんて言う?現役の米国公認会計士がやさしく解説!〜英文会計入門シリーズ第5回〜
-
-
【借方・貸方】は英語でなんて言う?米国公認会計士がやさしく解説!〜英文会計入門シリーズ第5回〜
こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。 「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています。 この記事では ...