こんにちは。会計英語アカデミー運営者のわだけんです。
「英文会計入門」シリーズでは、英語で簿記や会計を理解したい方向けに、簡潔に分かりやすく英文会計の基本を解説しています。
この記事では「英文会計入門」第36回として「製造原価報告書を英語でどう読んだらいいの?」という疑問にやさしくお答えします。
◆前回の記事◆【原価差異・有利差異・不利差異】は英語でなんて言うの?米国公認会計士が解説!〜英文会計入門シリーズ第35回〜
製造原価報告書は英語でなんて言うの?
「製造原価報告書」とは、メーカーが当期に製造した製品の原価を集計した報告書のことです。「製造原価明細書」とも呼ばれます。
製造原価報告書では、当期に発生した原価を「直接材料費」「直接労務費」「直接経費」「製造間接費」に分けて集計し、「当期総製造費用」を計算しますね。
このステップで「当期に製造プロセスで消費(投入)した原価」が分かります。
この「当期総製造費用」に「期首仕掛品棚卸高」つまり前期の「期末仕掛品棚卸高」をプラスすると「総製造原価」が計算できます。
この「総製造原価」から「期末仕掛品棚卸高」をマイナスすると「当期製品製造原価」が出てくるという仕組みです。
製造原価報告書の最後に集計された「当期製品製造原価」は、損益計算書の「売上原価」の一部として記載されます。
また、製造原価報告書の「期末仕掛品棚卸高」は、貸借対照表の「棚卸資産」の一部として記載されます。
各財務諸表と製造原価報告書との繋がりが見えてきたでしょうか?
上記は2級の工業簿記の範囲ですが、内容を忘れてしまった方は、『いぬぼき』さんの記事を参考にしてください。
では、「製造原価報告書」は英語で何と言うのでしょう?
正解は、"Schedule of Cost of Goods Manufactured"です。
"Schedule"の一般的な意味は「スケジュール、予定、計画」ですが、会計の専門用語で「明細書」という意味があります。
また、"Cost of Goods Manufactured"は、「当期製品製造原価」という意味の専門用語です。
この"Schedule of Cost of Goods Manufactured"は、"Cost of Goods Manufactured Schedule"と呼ばれることもあります。
日本では、製造原価報告書はCost Report (C/R)とも呼ばれるため、英語も同じくCost Reportと考えてしまいがちです。
実際に、日本のGoogleで「製造原価報告書 英語」と検索すると、"factory cost report"や"production cost report"が上位表示されています。
しかし海外のGoogleで「cost report」を調べるとCourse Heroの記事のように、製造原価報告書とは異なるフォーマットの原価報告書が出てくるので注意してください。
例文紹介
- 製造原価報告書で計算された合計値は、報告期間の売上原価を算出するために使用される。
The total derived from the cost of goods manufactured schedule is used to calculate the cost of goods sold for a reporting period.
製造原価報告書の各項目を英語で読もう
直接材料費
製造原価報告書の直接材料費には以下の情報が記載されています。
- 期首材料棚卸高
- 当期材料仕入高
- 1.と2.の合計
- 期末材料費棚卸高
- 3.から4.を引いた当期材料費
それぞれ英語で何と言うのでしょうか?
- Beginning inventory
- Purchases
- Materials available for use
- Ending inventory
- Direct materials used
Beginning inventory(期首棚卸高)、Purchases(当期仕入高)、Ending inventory(期末棚卸高)の3つの表現は、材料費以外にも「仕掛品」や「製品」で使われる共通の用語です。
各項目は原価計算をする上で必要不可欠な会計英語ですので、早めに覚えてしまいましょう。
直接労務費と直接経費
直接労務費と直接経費は、それぞれ英語で"Direct labor costs", "Other direct costs"と表現します。
より詳細な解説は「製造原価は英語でなんて言うの?」を参考にしてください。
製造間接費
製造間接費は英語で"Manufacturing overhead (MOH)"もしくは"Factory overhead(FOH)"といいます。
「配賦する」などの製造間接費の関連用語は「製造原価は英語でなんて言うの?」で扱っているので、よかったらご覧ください。
製造間接費の主な内訳には以下のようなコストがあります。
- 間接材料費
- 間接労務費
- 減価償却費
- 修繕費
- 水道光熱費
- 賃借料
- 保険料
- 租税公課
それぞれ英語で何と言うのでしょうか?
- Indirect material costs
- Indirect labor costs
- Depreciation
- Repair and maintenance costs
- Utilities
- Rent expenses
- Insurance expenses
- Taxes and dues
上記のような工場で日常的に発生するコストの会計英語は、暗記してしまうのが楽です。
当期総製造費用
「直接材料費」「直接労務費」「直接経費」「製造間接費」の合計を「当期総製造費用」といいます。
英語では、"Manufacturing costs incurred during the period"と表現します。
少し長い用語なので、3つに分解して考えましょう。
前半の"Manufacturing costs"は「製造原価」、半ばの"incurred"は過去分詞で「発生した」、後半の"during the period"は「当期」という意味です。
つまり、「当期に発生した製造原価」ということですね。
期首仕掛品棚卸高、期末仕掛品棚卸高
製造原価報告書の最終目的である「当期製品製造原価」を計算する過程で、「期首仕掛品棚卸高」と「期末仕掛品棚卸高」が出てきます。
それぞれ英語で何と言うのでしょうか?
「直接材料費」のセクションで学んだことを思い出してください。
- 期首仕掛品棚卸高="Beginning Work-in-process inventory"
- 期末仕掛品棚卸高="Ending Work-in-process inventory"
まず、期首であれば"beginning"、期末であれば"ending"を頭につけます。
仕掛品は"work-in-process"と表現します。「生産プロセスで作業中のもの」と覚えてください。"WIP"と省略されることもあります。
最後に、「棚卸高」を意味する"inventory"を付けて終わりです。
上記のような長い会計英語も分解して覚えましょう。
総製造原価、当期製品製造原価
「期首仕掛品棚卸高」と「当期総製造費用」を合計した「総製造原価」は英語で何と言うのでしょうか?
正解は、"Total manufacturing costs"です。
「総製造原価」は前期以前から繰り越された製造原価を含んでいるので、「すべての」という意味の"Total"を頭につけます。
では、「総製造原価」から「期末仕掛品棚卸高」を引いた「当期製品製造原価」は英語で何と言うのでしょうか?
正解は、"Cost of goods manufactured"です。
「売上原価」は"Cost of goods sold (COGS)"と言うのですが、最後の"sold"を"manufactured"に変えると「当期製品製造原価」という意味になります。
以下の用語は日本語と同様に英語もごちゃごちゃになりやすいので、きちんと頭で整理して覚えることが重要です。
- 当期総製造費用="Manufacturing costs incurred during the period"
- 総製造原価="Total manufacturing costs"
- 当期製品製造原価="Cost of goods manufactured"
参考動画
製造原価報告書の関連する英語表現をもっと学びたい方は、以下の動画がおすすめです。(リスニングに自信のある方向け)
https://www.youtube.com/watch?v=4Oit9o2q-WU
まとめ:本日の復習
- 製造原価報告書:Schedule of Cost of Goods ManufacturedもしくはCost of Goods Manufactured Schedule
- 当期総製造費用:Manufacturing costs incurred during the period
- 期首仕掛品棚卸高:Beginning Work-in-process inventory
- 期末仕掛品棚卸高:Ending Work-in-process inventory
- 総製造原価:Total manufacturing costs
- 当期製品製造原価:Cost of goods manufactured
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