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【ロマネスクとゴシック美術】キリスト教の普及が目的!?〜ヨーロッパ建築を中世ヨーロッパ史から読み解こう!〜

2021年1月3日

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476年の西ローマ帝国滅亡(ローマ帝国の東西分裂は395年)からヨーロッパは「中世」の時代に突入します。古代ギリシャ・ローマの記事では当時の美術として彫刻を紹介しましたが、この記事ではロマネスク・ゴシック時代の美術として建築と絵画を紹介します

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【ギリシャ彫刻とローマ彫刻】美術を気軽に楽しもう!〜神々や英雄の彫刻が芸術の中心だった時代〜

西洋美術史の原点は古代ギリシャ・ローマ時代と言われています。BC8世紀から古代ギリシャの歴史が始まり、BC2世紀から始まった共和国ローマによるギリシャ支配を経て、4世紀の古代ローマ帝国の崩壊までを古代 ...

西洋美術史において、ロマネスク期の始まりは10世紀末(1000年頃)、ゴシック期の始まりは12世紀中頃(1150年頃)とされています。中世の始まりとされる476年からロマネスク期まで約500年の空白期間が発生しますが、この記事ではその500年間を(1)ローマ=カトリックの普及、(2)イスラムの躍進、(3)ローマ=カトリックの定着に分類し、ロマネスク期までの歴史の重要な出来事を簡潔に紹介します

500年の空白期間を振り返った後、ロマネスク・ゴシック美術の特徴を説明します。ゴシックの次の時代「ルネンサンス」は15〜16世紀に分類されますが、ルネサンスの中心がイタリアのフィレンツェであり、フィレンツェで芸術家の活動を支えたメディチ家がフィレンツェで支配を確立する1434年までを、この記事ではゴシック期とします

この記事では建築・絵画ともに代表作の写真も載せていますので、ロマネスク・ゴシック美術をお楽しみください!

ロマネスク・ゴシックの時代区分

ロマネスク・ゴシックの時代区分

  • ローマ=カトリックの普及(476年〜622年)
    476年:ゲルマン人オドアケルが西ローマ帝国を征服(ヨーロッパ「中世」の始まり)
    481年:クローヴィスによってフランク王国(メロヴィング朝)が誕生
    493年:東ゴート王国が誕生(東ローマ皇帝が東ゴート族にオドアケル討伐を依頼)
    553年:東ゴート王国が滅亡(東ローマ帝国が西ローマの統一に成功)
  • イスラムの躍進(622年〜750年)
    622年:ムハンマドがメッカからメディナに移住(ヒジュラ:聖遷)
    661年:ウマイヤ朝の開始(イスラム史上最初の世襲イスラム王朝)
    709年:ウマイヤ朝がマグリブ征服(北アフリカを東ローマ帝国から奪取)
    711年:ウマイヤ朝が西ゴート王国を征服(イベリア半島を掌握)
    718年:コンスタンティノープル包囲戦(ウマイヤ朝が東ローマ帝国の征服を断念)
    732年:トゥール=ポワティエ間の戦い(フランク王国がウマイヤ朝を撃破)
    750年:ウマイヤ朝の滅亡、アッバース朝の開始(イベリア半島に後ウマイヤ朝)
  • ローマ=カトリックの定着(750年〜1000年)
    751年:フランク王国でメロヴィング朝が滅亡、カロリング朝が開始
    800年:カールの戴冠(ローマ教皇がローマ皇帝の冠を授ける)
    814年:カール大帝が死亡
    843年:ヴェルダン条約(フランク王国が東・西・中フランク王国に分割)
    870年:メルセン条約(ヴェルダン条約の再区画で現在の独・仏・伊の原型が完成)
    962年:オットー1世戴冠(ローマ教皇が神聖ローマ皇帝の帝冠を与える)
    987年:西フランク王国(フランス)でカペー朝が開始(カロリング朝が滅亡)
  • ロマネスク時代:ローマ教会の興隆(1000年〜1148年)
    1038年:トゥグリル・ベグがセルジューク朝を創始(イスラム王朝)
    1077年:カノッサの屈辱(ローマ教皇が神聖ローマ皇帝を破門、教皇権>王権を確立
    1096年:第1回十字軍派遣(〜1099年、聖地エルサレムを奪回)
    1122年:ヴォルムス協約(聖職者の叙任権はローマ教皇が保持)
    1147年:第2回十字軍派遣(〜1148年、目的が曖昧かつ成果は何もなし)
  • ゴシック時代前半:ローマ教会衰退(1148年〜1303年)
    1187年:ヒッティーンの戦い(サラディンが第3回十字軍をエルサレムで撃破)
    1202年:第4回十字軍派遣(〜1204年、コンスタンティノープル陥落)
    1215年:イングランドで大憲章(マグナ=カルタ)が制定
    1217年:第5回十字軍派遣(〜1221年)
    1228年:第6回十字軍派遣(〜1229年)
    1248年:第7回十字軍派遣(〜1254年)
    1270年:第8回十字軍派遣
    1273年:ハプスブルグ家のルドルフ1世がローマ王に選出(大空位時代が終了)
    1303年:アナーニ事件(フランス国王がローマ教皇を捕縛、教皇権<王権を確立
  • ゴシック時代後半:飢饉・戦争・黒死病(1303年〜1434年)
    1315年:ヨーロッパ大飢饉(〜1317年)
    1337年:百年戦争の開始、ゴシックを代表するイタリア人画家ジョットが死去
    1347年:黒死病(〜14世紀末)
    1358年:ジャックリーの乱(フランスで起きた農民反乱)
    1381年:ワット=タイラーの乱(イングランドで起きた農民反乱)
    1434年:コジモ・デ・メディチがフィレンツェで支配を確立

ロマネスク建築:1000年〜1148年

ロマネスクは「ローマ風の」という意味で、ヨーロッパ各地方の修道院から発展しました。ロマネスク美術(ロマネスク建築)は教会などの建築物そのものが美術作品になっていて、以下のような特徴があります。

ロマネスク建築の特徴

  • 小さな窓
  • 半円アーチ
  • 重厚な石壁
  • 半円形の扉
  • 暗い内部空間
  • 建物内に壁画アート

ロマネスク建築を代表するのはイタリアのピサ大聖堂です。

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有名なピサの斜塔と共に1987年に世界遺産へ登録されています。窓が小さく、重厚な石壁を遠くからでも感じられ、ロマネスク建築の特徴がよく表れています

ゴシック建築:1148年〜1434年

ゴシック建築は、ヨーロッパ主要都市(特にフランス)の大聖堂を中心に発達し、現在もヨーロッパで最もよく目にする建築様式です。ゴシックは「ゴート人の」という意味であり、ルネサンス期に「野蛮な」と軽蔑視された美術でした。ゴシック建築は文字の読めない民衆にキリスト教の教義や聖書の内容を伝える役割を持っており、以下のような特徴があります。

ゴシック建築の特徴

  • 細長い尖塔
  • 大きく色鮮やかな窓
  • 柱に精巧な彫刻(人物像)
  • 建築技術発達に伴う建物の高層化
  • 建物内部に神秘的なステンドグラス

ステンドグラスから溢れる太陽の光は神秘的で、礼拝をする(神に祈りを捧げる)場所として大聖堂の威厳が高まり、ゴシック建築はキリスト信者を増やす大きな支えとなりました

イタリア:ミラノ・ドゥオーモ

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ゴシック建築を代表するのはイタリア・ミラノのドゥオーモです。ドゥオーモ(イタリア語)はイタリアの街を代表する教会堂のことで、ミラノのドゥオーモはミラノ大聖堂とも呼ばれます。

ドゥオーモの高さは108メートル、イタリア最大のゴシック建築です。ゴシック建築の特徴である「細長い尖塔」や「建物の高層化」が上の写真から確認できます。続いて、ドゥオーモに上った写真を見てみましょう。

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細長い尖塔がいくつもあり、「精巧な彫刻」として尖塔ごとに人物像がミラノの街を見下ろしています。最後に、大聖堂の内部の様子を見てみましょう。

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ロマネスク建築に比べて、「大きく色鮮やかな窓」と「神秘的なステンドグラス」が写真から伝わってきます。ドゥオーモは外観が素晴らしいのはもちろんですが、大聖堂の内部もゴシック建築の特徴が非常によく表れています。ドゥオーモの様子はYouTube動画でも紹介しています。

イギリス:ロンドン・ウエストミンスター寺院

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ロンドンにある世界遺産ウエストミンスター寺院(Westminster Abbey)はイギリスを代表するゴシック建築です。ヘンリー3世が13世紀中頃に完成させました。王室の戴冠式やロイヤル・ウエディング、英国王や署名人の埋葬地(約3,300人)としても有名です。ファサード(建築物の正面部分)を見てみましょう。

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ファサードの建物入口ではイエス・キリストを抱える聖母マリアが礼拝者を温かく見守り、聖母マリアの上には聖人がびっしりと並んでいます。

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ファサードの柱には聖人の彫刻がペアで並んでいます。入口と柱のどちらにも、ゴシック建築の特徴である「精巧な彫刻」が明確です。ウエストミンスター寺院に隣接する塔のステンドグラスも見てみましょう。

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ゴシック建築の特徴をである「美しく神秘的なステンドグラス」です。ロマネスク建築の暗い内部空間と比較すれば、ゴシック建築の内部は明らかに華やかになりました。

ウエストミンスター寺院の豆知識

  • ロイヤルウエディングが16回行われた
  • 英国国教会の祖ヘンリー8世の墓はない
  • エリザベス1世とメアリー1世の墓は同じ部屋にある
  • 1560年から英国国教会の管轄を離れ、王室直属の教会になった
  • 毎年3月にコモンウェルスデーを祝い、毎年9月にBattle of Britainの戦死者を悼む
  • 礼拝は毎日4回、奴隷貿易廃止や第二次世界大戦100周年などを記念する礼拝が行われてきた
  • 1483年のエドワード5世と1936年のエドワード8世を除いて、全ての国王の戴冠式が実施された

ウエストミンスター寺院の様子はYouTube動画でも紹介しています。

ゴシック絵画:1148年〜1434

ゴシック美術の中心は建築でしたが、イタリアを中心に絵画も少しずつ発展していきます。ゴシック建築と同じように、ゴシック美術も文字の読めない民衆にキリスト教の教義や聖書の内容を伝える役割を担い、絵画の対象はキリスト教でした。ギリシャ神話の神々が描かれるのはルネサンス期(古代ギリシャ・ローマの再生)になってからです。ゴシック絵画には以下のような特徴があります。

ゴシック絵画の特徴

  • 優雅な作風
  • 聖地な筆使い
  • 絵画も額縁も装飾的
  • イエス・キリストや聖母マリアが中心
  • 遠近法ではなく最も大事なものを大きく描く

ドゥッチョ「ルッチェライの聖母」

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それでは、イタリアを代表するゴシック絵画を2つ紹介します。最初に紹介するのは、イタリアのゴシック傑作と呼ばれるドゥッチョ作の「ルッチェライの聖母」です。

絵画情報

  • 作品:ルチェッライの聖母(Rucellai Madonna or Madonna and Child Enthroned with Angels)
  • 画家:ドゥッチョ(Duccio di Buoninsegna)
  • 場所:ウフィツィ美術館(イタリア、フィレンツェ)
  • 技法:卵テンペラ(パネル画)
  • 完成:1285年

13世紀最大の板絵(painted panel)で、イエス・キリストを膝に抱える聖母マリアが中心に大きく描かれています。全体的に明るい色(黄金色)を使う中で、聖母マリアだけは落ち着いた紺色で描かれており、聖母マリアが最も目立つ構成になっています。

聖母マリアが座る椅子の左右には天使が跪いていますが、遠近法を用いずに6人とも同じ大きさになっています。フレームには聖人たちが等間隔で描かれていて、細部までキリスト教を伝える意図を込めているようです。

ジョット「荘厳の聖母」

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次に紹介するのは、ルネサンス先駆者と呼ばれるジョット作の「荘厳の聖母(オニサンティの聖母)」です。

絵画情報

  • 作品:荘厳の聖母(Madonna and Child Enthroned with Angels and Saints)
  • 画家:ジョット(Giotto di Bondone)
  • 場所:ウフィツィ美術館(イタリア、フィレンツェ)
  • 技法:卵テンペラ(パネル画)
  • 完成:1306-1310年

優雅な作風や聖母マリアを中心に据えたキリスト教の伝達など、ゴシックの特徴がしっかり出ています。一方で、聖母マリアとイエス・キリストが人間らしく描かれていて、これまでのゴシック絵画とは異なる点も注目に値します。

ルネサンス期は15世紀中頃からの時代を指しますが、ジョットはゴシック時代の著名な画家でありながら、ルネサンスの画家たちに大きな影響を与えたと言われています。

ゴシックとルネサンスの美術作品を数多く展示しているウフィツィ美術館の様子は、YouTube動画でも紹介しています。特にルネサンス美術は作品が豊富で、ボッテチェリやルネサンス三代巨匠(レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ)の作品は素晴らしいです!

ロマネスク・ゴシック時代の著名人

ロマネスク・ゴシック時代の著名人

参考文献

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